電子書籍端末をいじってきた

4月 22nd, 2004
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今日から4月25日まで、東京国際展示場(東京ビッグサイト)で第11回東京国際ブックフェア2004が開催されている。同時開催のデジタルパブリッシング フェアで電子書籍・出版関連の製品が出展されているので、行ってみた。お目当ては、LIBRIé(リブリエ)をはじめとした電子書籍端末だ。


カタログではLIBRIéの厚みは約13mm、重さ約190gとなっているが、持ってみると意外なほど軽く感じる。ページ送りも片手(左手)だけでできるように工夫されており、これなら通勤電車での読書も無理なくできそうだ。いろいろなサイトですでに書かれているように、ページ切替の速度は速くはない(Σ Bookよりは速いけど)し、一瞬白黒反転するのも気になる(使われている電子インクの特性によるもの)。もっとキビキビ動けば辞書も快適に使えるのだが。まあ、端末デザインもガジェット好きの心をくすぐるようにできているし、ハードウェアとしてはけっこうよいのでは。
しかし、以前にも述べたが、ネックとなるのは辞書以外のコンテンツはすべてレンタルだということだと思う。LIBRIéで使われるBBeB形式データを作るためのオーサリングツール「Book Creator」も法人向けにしか販売されない。初年度73,500円、2年目以降52,500円というライセンス価格も個人にとってはかなり高い。プレーンテキストの変換機能だけを備えたツールを個人向けに安く(あるいは無料で)提供してほしいところだ。このあたりに関しては、テキストを専用ツールで変換して利用できるΣ Bookの方が優れている。
BBeB形式のコミック(ゲゲゲの鬼太郎)も見られるようになっていた。4?5ページくらいで500KB程度の容量になっていたから、コミック1冊丸ごとを読むには大きめのメモリースティックが必須になるだろう。

Σ Bookは以前にもちょっと触ってみたことはあるのだが、改めてLIBRIéと比べると動作ももっさりとしているし、デザインも垢抜けない。テキストを検索できないのも痛い。しかし、2画面備えているのでコミックには最適だろう。LIBRIéだと見開きの迫力あるページを再現できないから。
説明員の方に聞いたところでは、現在のΣ Book用コンテンツはビットマップデータであるHatch形式データが主体だが、今後はテキストのコンテンツも販売していくという(Σ Bookにはフォントも内蔵されている)。Σ BookでのテキストはBBeBコンテンツやT-Timeなどと違い、見映えなどお構いなしに、ただテキストを表示するだけという感じだが。
また、Σ Bookは独自のOSで動いており、専用データ(Hatch形式)やBMPデータ、テキスト以外のフォーマットにも対応できるとのこと。Σ Book用ビューアを開発して、コンテンツといっしょに販売するということも想定されている。極端な話、BBeB用データのビューアがあれば、LIBRIé用コンテンツも見られることになる(著作権管理の仕組みやビジネス上の関係からいってその可能性は低そうだけど)。

特に新しいネタはないが、シャープのXMDF電子書籍フォーマットも展示されていた。ボーダフォンの携帯電話や、ザウルス、Palm、Pocket PCに対応しているから、モバイル機器用の商用フォーマットとしてはいちばん出回っているかもしれない。テキストや画像の表現機能も多彩だし、購入者が利用しやすいフォーマットの仕様になっている。ガチガチにセキュリティを固めるのではなく、フットプリント(電子透かし)を配信過程でコンテンツに埋め込むのだ。正直、XMDFのコンテンツがLIBRIéで読めれば、それでいいのになあと思ってしまう。

ボイジャーは、T-TimeのTTX形式ファイルから.book(ボイジャーの商業出版向けフォーマット)、TTZ(ボイジャーの個人出版向けフォーマット)、Σ Book、XMDF、BBeBに変換できることをアピール。出版社は、TTXでコンテンツを作っておけば、メジャーな電子書籍フォーマットすべてに対応できることになる。TTXはHTMLのサブセットなので、HTMLの知識が多少あれば誰でも簡単に作れるのもミソ(有料コンテンツ形式を作成するにはボイジャーとライセンス契約を結ぶ必要がある)。
TTZや.bookもPDA・パソコン用の電子書籍フォーマット(TTZが読めるのはパソコン用T-Timeのみ)だが、他のフォーマットが優勢になったとしても、TTXを制作過程のフォーマットとして食い込ませようという作戦か。
T-bridgeを使ったオンデマンド印刷もユニークな展開だ。TTX形式データをT-bridgeに通すと、印刷所でそのまま印刷できる形式(PostScript)に変換できる。顧客の注文に応えて1冊から印刷できるわけで、絶版本の復刊や自費出版の可能性を広げそうだ。

各社がんばっているとは思うが、相変わらずデータ形式が入り乱れて、購入する側から見るとさっぱり訳がわからない。いい加減どれかに統一しろよといいたくなる(TTXならどのフォーマットにも変換できるというのはあくまでもコンテンツを作る側にとってのメリットだ)。さらに、アドビのAdobe eBookやら、Open eBook日本語ページ)もある。

しかし、LIBRIéΣ Bookが登場してきたことで、以前よりも多くの本好きの関心を集め始めているのは確かなようだ。2、3年のうちにはフォーマットの勝ち負けもはっきりしてくるのだろうか。

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