世界はこれからどこへ向かうのか?『21世紀の歴史』

2月 24th, 2009
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21世紀の歴史――未来の人類から見た世界『21世紀の歴史』は、21世紀の国家、資本主義、政治、宗教がどうなっていくのかを大胆に予測した本。紀元前からの歴史を概観し、そこから未来に適用できるルールを浮き上がらせる手法はかなりスリリングだ。


著者のジャック・アタリによると、これまで世界の「中心都市」は、ブルージュ(1200〜1350)、ヴェネチア(1350〜1500)、アントワープ(1500〜1560)、ジェノヴァ(1560〜1620)、アムステルダム(1620〜1788)、ロンドン(1788〜1890)、ボストン(1890〜1929)、ニューヨーク(1929〜1980)、ロスアンジェルス(1980〜?)、という順で変遷してきたという(日本の東京は、何度も中心都市になるチャンスを逃してきたのだとか)。
アメリカの衰退とともに、国家を超えた「超帝国」が出現し、世界の各地で熾烈な「超紛争」が起こるという未来予測はかなり暗い。しかし、ジャック・アタリは、たんなる無責任な批評家やアナリストではない。ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌスとも親交があり、自身の予測する暗い未来が実現しないようにさまざまな活動(マイクロ・ファイナンスなど)を行っている。
それにしても、歴史、政治、経済、技術、個人のライフスタイルに至るまで、個々のディテールを把握しつつ、将来的なビジョンを描く、彼の思索には圧倒される。こういう人材を生み出すヨーロッパには、まだまだ学ぶところが多そうだ。
かなりぶっ飛んだ未来予測も含まれているから近未来SF小説や経済小説の種本として使うもよし、新しいビジネスのヒントを得るために使ってもよし。
フランスのサルコジ大統領は、ジャック・アタリの提言に感銘を受けて、政策委員会を発足したそうだ。それに引き替え、「うちの子」はねえ……。ほんと、隣の芝生は青く見える。

これから世界はどう変化していくのか。将来の「中心都市」候補を取り上げた、NHKスペシャル「沸騰都市」も実に興味深かった(ジャック・アタリは、ロスアンジェルスの次は、特定の中心都市はなくなるかもしれないと言っているが)。国のビジョンと、そこで暮らす人々の現実が鮮烈に描き出されていて、一見の価値あり。
ただ、最終話の「東京」だけは、正直ちょっとしょんぼりな出来。三菱地所と森ビルの宣伝に終始して、国としてのビジョンのなさを印象づけられてしまった感じがした。最後に、日本を持ってきて、「さあ私たちもがんばろう!」と締めたかったのだろうが、逆効果だったかな。日本人は、もう国なんかに頼ってはいられないという意味で、「しゃきっ」とさせられるけど。

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